――売ることより、育てることを考えてきた

白蝶花 Perla&Fioreは、2003年、京都で始まりました。

最初から現在の名前だったわけではありません。

最初の名前は、「アクセサリーカノン」。

今のようにスマートフォンで何でも買える時代ではなく、インターネットで商品を買うこと自体が、まだ少し新しかった頃です。

始まりの中心にいたのは妻でした。

小さなアクセサリー販売から始め、商品を探し、工場との関係をつくり、少しずつ扱えるものを増やしていきました。

私はその横で、商品構成、バリエーション、ページ設計、顧客対応、知的財産など、事業を成立させるための仕組みを少しずつ整えていきました。

二人で営む、とても小さな事業です。

けれど私たちは、短期間で大きくすることより、長い時間をかけて育てることを考えてきました。

ブランドは、宣言した日に完成するものではない。

商品を作り、お客様へ届け、反応を受け取り、また少し変える。

その繰り返しの先に、ようやく形が見えてくるものだと思っています。


30年かけて、ブランドを育てる

私たちは創業当初から、短期間で有名ブランドになることを目標にはしていませんでした。

一つの目安として考えていたのは、30年です。

当時、インターネットで買い物を始めた世代も、当然ながら年齢を重ねていきます。

20代だった人は30代へ。

30代だった人は40代、50代へ。

ネットショッピングに慣れた世代が成熟し、自分のために少し良いものを選ぶ年齢になったとき、このブランドの顧客層も時間とともに厚くなっていく。

そんな未来を考えていました。

15年目の秋、「アクセサリーカノン」から「白蝶花 Perla&Fiore」へ。

18年目に、「手の届くハイジュエリー」という言葉が定まりました。

そして20年目になって、ようやくブランド理念を文章として外へ出しました。

遅いと思われるかもしれません。

でも、私たちにはそのくらいの時間が必要でした。

ブランドとは、自分たちが「これです」と言ったものではなく、長い時間をかけて、お客様との間に形成されるものだからです。

→ 白蝶花 Perla&Fiore 公式サイト「ブランドコンセプト」を見る


2014年、楽天市場へ

事業を始めてから約10年が経った2014年9月、私たちは楽天市場へ出店しました。

ネットショップを始めた直後に楽天市場へ入ったわけではありません。

商品を作り、お客様へ届け、失敗し、修正しながら、小さなネットショップとして十年ほど経験を積んだ後のことでした。

そして2024年、楽天市場への出店から10年を迎えました。

楽天市場では、出店を長く継続してきた店舗に、その年月を示す出店記念エンブレムが付与されます。

ネットショップを運営する者にとって、それは売上額とは少し違う嬉しさがあります。

その場所で、長い時間商いを続けてきたという記録。

一件の注文、一つのレビュー、一度の問い合わせ、一度の修理。

そうした小さな出来事が積み重なり、気がつけば十年という時間になっていました。

ブランドも同じなのだと思います。

一度の広告や、一つのヒット商品で完成するのではなく、時間の中で少しずつ信用が積み上がっていく。

→ 白蝶花 Perla&Fiore 楽天市場店を見る


憧れを、手の届く喜びに変える

白蝶花が扱ってきた中心素材は、マザーオブパール。

真珠を育てる母貝です。

何層にも重なった真珠層に光が入り、反射や屈折を繰り返すことで生まれる独特の輝きに、私たちは魅力を感じてきました。

高価なジュエリーには、人を幸せにする力があります。

けれど、高価になりすぎれば、

「なくしたらどうしよう」

「傷つけたらどうしよう」

という不安も生まれます。

せっかく持っているのに、ジュエリーボックスから出せない。

それでは少し寂しい。

憧れが持つ喜びや高揚感は残しながら、日常の中で安心して身につけられる価格へ。

それが、私たちが考える「手の届くハイジュエリー」です。


自然科学を、デザインの中へ

私は自然科学を学んできました。

だからなのか、美しさについて考えるときにも、感覚だけではなく、その背景にある構造を考えます。

自然界の形。

黄金比。

フィボナッチ数列。

光の反射。

色。

大きさ。

左右のバランス。

人が「心地よい」「美しい」と感じるものには、何か共通する構造があるのではないか。

そんな視点を、モチーフの比率や粒の配置、素材選びなどへ少しずつ入れてきました。

科学によって美しさを証明したいわけではありません。

むしろ、感覚として感じている美しさの裏側に、どんな構造があるのかを考えることが好きなのだと思います。


商品ページを、有能な営業マンに育てる

ECには、店頭に立つ販売員がいません。

商品を手に取っていただくこともできません。

その代わりに、お客様と向き合うのが商品ページです。

だから私は、商品ページを単なるカタログとは考えていません。

一人の有能な営業マンとして育てる。

そんな感覚で作っています。

素材は何か。

どのくらいの大きさか。

どんな服に合うのか。

ピアスとイヤリングはどう違うのか。

長さを変えると、印象はどう変わるのか。

お手入れはどうすればよいのか。

お客様が画面の前で抱く疑問を、一つずつ先回りして答えておく。

しかも、押し売りをしない。

必要な情報を静かに置き、お客様自身に選んでいただく。

これは、対面営業とは違うECならではの営業設計です。


写真より、実物の方が少し良い

ネットショップでは、写真を美しく見せることが重要です。

でも、私たちは少し違うことを考えています。

写真より、届いた実物の方が少し良い。

その状態を作りたい。

写真を盛りすぎれば、注文は増えるかもしれません。

でも、お客様の頭の中に作られた期待値が高くなりすぎます。

届いた商品が写真通りでも、「思ったほどではなかった」という感覚が生まれることがあります。

逆に、期待値をほんの少し上回れば、箱を開けたときの喜びになる。

私はこれを、商品そのものだけではなく、EC全体の設計だと考えています。

期待値より、実体験を少し上へ。

長く続く信用は、その小さな差から生まれるのだと思います。


直接お会いできないお客様だからこそ

ECでは、ほとんどのお客様と直接お会いすることはありません。

だからこそ、少しの文章、梱包、修理対応、交換対応が、そのまま店の人格になります。

チェーンを少し短くしたい。

イヤリングを調整したい。

使っていた商品が壊れた。

プレゼントとして包みたい。

一つ一つは、とても小さな出来事です。

でも、お客様にとっては、その一件が「この店とはどんな店なのか」を決める出来事になります。

私たちは、効率化できることをすべて効率化しようとは考えていません。

電話営業もほとんど必要ありません。

レビューを自動的に集める仕組みも使っていません。

レビューを書いてもらうための仕掛けより、商品を受け取った後に自然に残る余韻を大切にしたいからです。


レビューは、ブランドの輪郭を教えてくれる

レビューは、点数だけを見るものではないと思っています。

同じ商品でも、人によって受け取り方は違います。

とても喜んでくださる方もいれば、想像していたものと違ったと感じる方もいます。

その温度差は、悪いことではありません。

むしろ、自分たちが伝えた内容と、お客様が受け取った期待との間に、どんな差があるのかを教えてくれる大切な情報です。

レビューを消したいとは思いません。

売れ筋ではない商品に残った厳しい声であっても、未来のどこかで意味を持つことがあります。

ブランドコンセプトを考えていた頃、特に嬉しかったお客様の言葉がありました。

「商品愛を感じます」

自分たちが説明したかったことを、お客様の方から先に言葉にしてくださった。

ブランド理念は、自分たちだけで作るものではない。

そう感じた言葉でもあります。


商品品質は、一種目では決まらない

ECの商品品質というと、商品そのものの出来だけを考えがちです。

でも、私たちはもう少し広く見ています。

商品。

価格。

素材の選別。

国内での仕上げ。

商品説明。

写真。

梱包。

発送。

問い合わせ対応。

修理や交換。

一つだけ100点でも、他が大きく崩れれば、お客様の体験全体は良いものになりません。

私はこれを、十種競技のようなものだと考えています。

突出した一種目だけで勝つのではなく、全体として高い水準を成立させる。

それが、小さなEC事業が大きな事業者と違う場所で戦う方法でもあります。


知的財産は、若い頃から身近にあった

知的財産への関心は、このブランドを始めてから突然生まれたものではありません。

20代の頃、私は発明そのものを趣味のように楽しんでいました。

発明学会に関わり、思いついたアイデアを企業へ提案し、返事をもらい、文章を書き、発明に関する媒体へ投稿する。

特許、実用新案、意匠、商標。

アイデアそのものだけではなく、それをどう記録し、どう説明し、どう権利として扱うのかに興味を持っていました。

若い頃のある知財交渉では、相手側の発言を後から正確に確認できるようにしたいと考え、隠しマイク式の録音機器を身につけて出張したことさえあります。

今であれば、法令、守秘、相手との信頼関係などを含め、そのような手法はより慎重に判断すべきものだと考えています。

ただ、その頃から変わっていないものがあります。

「言った、言わない」にしないこと。

感情ではなく、記録と事実へ戻ること。

この姿勢は、その後の仕事や経営、そしてブランド運営にも残りました。


小規模事業者が、知財紛争の非対称戦を生きる

ブランドを長く続けていれば、知的財産をめぐる問題に直面することがあります。

相手が世界的なブランドを持つ大企業であれば、その戦力差は大きい。

弁護士の人数。

知財部門。

資金。

情報量。

時間。

小さな事業者が、正面から同じ戦い方をしようとしても勝負になりません。

だから必要なのは、大きな相手より多く撃つことではありません。

何が事実なのか。

相手の権利は、どこまで及ぶのか。

何を権利化でき、何を権利化できなかったのか。

自分たちは、いつから何を作ってきたのか。

どんな権利を持ち、どんな記録を残しているのか。

そして、その事実が時間軸の中でどうつながっているのか。

情報を集め、構造を理解し、自分たちが破滅しない戦い方を選ぶ。

これは私にとって、経営そのものとよく似ています。

この話は、いずれ

「小規模事業者が、知財紛争の非対称戦で生き残る」

という一つの物語として、もう少し詳しく残したいと思っています。


売上を最大化しない、という事業設計

事業をしていれば、「もっと売上を増やしたい」と考えるのが普通かもしれません。

私たちは、必ずしもそう考えていません。

夫婦二人で、商品を選び、作り、整え、包み、問い合わせに答え、必要なら修理もする。

その品質を維持できなくなるほど売ることに、あまり魅力を感じません。

売上が大きくても、疲弊する。

顧客対応が雑になる。

商品品質が落ちる。

ブランドが少しずつ薄くなる。

それでは、何のために事業をしているのか分からなくなります。

私たちにとって大切なのは、最大売上ではなく、

長く続けても、自分たちらしさを失わない規模。

そこを探すことです。

成長しないという意味ではありません。

むしろ、無理に大きくしないからこそ、時間をかけてブランドそのものを大きくできる。

そう考えています。


パントスと白蝶花は、まったく違う事業なのに

一方は、企業を相手に計測機器を扱う製造会社。

もう一方は、個人のお客様へジュエリーを届ける小さなECブランド。

仕事の姿は、まったく違います。

でも私の中では、あまり違いません。

相手が何を求めているのかを見る。

期待値を読み違えない。

自分たちが提供している価値を過小評価しない。

価格だけで競わない。

破滅するほど無理をしない。

短期の数字より、長期の信用を残す。

将来の選択肢を消さない。

そして、時間を味方につける。

対象が違うだけで、使っている考え方は同じなのだと思います。


これから、この物語から伸びていく枝

白蝶花の20年以上を振り返ると、一つのページでは書き切れないテーマがいくつもあります。

商品ページを、有能な営業マンに育てる
直接お会いできないお客様だからこそ
レビューと期待値コントロール
写真より実物が良い、という商品設計
自然科学をデザインに使う
30年かけてブランドを育てる
小規模事業者が、知財紛争の非対称戦で生き残る
売上を最大化しない、という事業設計

まだ、完成したブランドではない

20年以上続いたからといって、白蝶花が完成したとは思っていません。

ブランドコンセプトを書いた2023年、私たちは自分たちのブランドを「七分咲き」と表現しました。

花は、満開になったら終わるわけではありません。

多年草のように、次の年にも咲く。

世代が変わっても、また誰かが楽しみにしてくださる。

そんなブランドであればいいと思っています。

これから商品も変わるでしょう。

販売方法も変わるでしょう。

AIも、ECも、社会も変わります。

でも、

お客様の期待を少し上回るものを、無理のない形で、長い時間届け続ける。

その根の部分は、これからもあまり変わらないのだと思います。


※本ページは、白蝶花 Perla&Fioreを2003年から運営する中で実際に経験してきた出来事、顧客対応、ブランド運営、知的財産への取り組み等を、現在の視点から振り返ったものです。知財に関する記述は個別紛争の法的評価や助言を目的とするものではなく、関係企業・ブランド等については必要に応じて一般化・匿名化しています。

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